音を楽しむ添景物の話

 庭つくりに関心があり,日本式の庭が好みだという人たちにとって,茶庭の露地風の景色のたたずまい(水を張った手水鉢を配して照明具としての燈籠を添え,その間を往来するための園路としての飛び石,延べ段,などがあり,これらを引き立て四季の変化を楽しませてくれる植栽を組み合わせたもの)は、日本式の庭の美しい要素がそろっています。その中でも蹲踞とよぶ石組は美しく,水を扱うことから庭に動感が生じます。茶室がなくても蹲踞だけを築く例が増えてきています。そして,近年,急速に庭の音としてクローズアップされてきたのが,「水琴窟」です。大変,優雅な名前に聞こえますが,この名の由来は,わかっていません。水滴が水鉢の排水路を落ちて,地中で共鳴音を響かせる現象を利用して,音のでやすいように工夫した仕掛けなのです。蹲踞の海にある排水口の下の地中に小さな洞窟をつくり,その中に設置した伏せ甕に落ちる水滴の音を反響させます。その共鳴音が,琴の音のようだといいはじめ,地中の窟から漏れてくるというところから水琴窟の名が生まれたのだろうといわれています。

 『水琴窟(すいきんくつ)』は,蹲踞として庭に風雅な景趣を添え,筧から落ちる水音と,地中から漏れてくる遠い過去から聞こえてくるような幽かな響きがあいまって,庭によりいっそうの静けさを強調します。江戸時代にはじまったらしいこの水琴窟は,一種の遊びであり洒落の世界のもの。楽しみ多い庭の仕掛けの一つです。当然,音が問題ですが,地中での仕掛けが主体となるため,音のしかけの上に組む水回り(縁先手水鉢の構成はじめ,手水鉢そのものの姿)のあり方のほうが,最後は中心になってしまいます。耳で聞く水琴窟の珠玉の音とともに目で楽しむ手水鉢の造形美,手水鉢を中心とした蹲踞のありかた,あるいは,それらを含めた露地づくりの基本に庭つくりの範囲が広がっていきます。

 『鹿(しし)おどし』は,音とともにその動きを楽しみます。「そうず」とも呼ばれますが,これは,竹筒に水を流し込み,竹を動かして音を出すために水辺に添えるものといった意味の「添水」であり「僧都」と書くこともあります。かつて畑の農作物を荒らすシカやイノシシなどを音で驚かして追い払うためのからくりとしてつくられたものでした。それが農村で普及するにつれて,その響き,余韻,音の間が風情として好まれ庭に取り入れられるようになったといわれています雑草の料理は,おひたしやてんぷらが定番ですが,普通の野菜と変わらない感覚でたべられます。

参考(楽しい庭つくり大百科 ぎょうせい,ガーデンライブラリー水琴窟の話 建築資料研究社,
ガーデン・テクニカル・シリーズB蹲踞作法)



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